とにかく「簡単に音が出る状態を作る」ことが大事と言い続けている理由。

尺八の音が出る状態のお手本は?

簡単に音がでる状態を作りましょう。
簡単に音が出る状態が壊れていないか気をつけましょう。

わかりやすく思い描くのはこれ↓

これ(上の絵はリコーダーの断面図です。)をイメージしましょう。
これを尺八と下唇と顎で再現するのです。

下唇と顎をつかって、しっかりと蓋をするイメージです。

それから、吹く、という行為に入ります。
そうすれば、そっと吹いただけで、音が出ます。

あまりにも基礎的でそんなの当たり前だろと思う人も多いかと思います。
しかし、見落としている人も大勢いると思います。

僕自身がそうでした。

このことにこだわっている理由は、自分自身の失敗、にあります。

 

(゚ー゚).。o○ ぽわわわーーーん

 

僕の尺八の吹き方の変化

尺八を始めた当初の僕は、吹く、ことで音がでると思っていました。

まず吹く、ともかく、吹く。

当て方に注意することはあっても、どう当てるかということを詳しく教わった記憶がありません。
なぜ音がでるかということまで、詳しく考えずに、なんとなく、なんとなくな理由で音がでると思っていました。

吹きにくいものだから、上手く吹くことで音がでる、と思っていました。

僕は、楽器を手にしたときからすぐに音が出たので、なおさら、吹けば出る!と思っていたのです。

そんな状態でもそれなりに練習していれば、それなりに吹けます。
今やっていることにそんなに大きな疑問は持ちません。

大きな音が出ないなー、吹き方が悪いんだろうな、練習すればできるようになるかー
とぼんやり、ぼんやり思っていたくらいです。

音の出にくい楽器だから、音が出にくくて当然だ、もっと色々なことを練習しないといけない、時間がもっとかかるものだ、続けていれば上手くなる、とぐらいに思っていたかもしれません。

 

色々な経験をへて大学生の頃になって

「大きな音を出したい、力強く、雷鳴が轟くかのような音が出したい。」

また、

「小さな音を出したい、繊細で、雲の隙間からさす光芒のような音が出したい。」

と言った欲求がもっと出てくるようになります。

息の強さ、息の量、をコントロールすればできるだろうと思い、色々と試行錯誤しました。

唇を強く閉じてみたり、息を強くかけてみたり、色々なことを試します。

このときによくないことが起こります。

 

下唇が動いてしまうのです。

そうすると

音の出やすい状態が壊れてしまう。

そもそも、当時の僕は、音の出やすい状態、を意識していたのだろうか?

いや、ない!ですよ。反語ですよ!

 

吹けば音が出るという考えでいるので、吹き方を工夫する、口元をあれこれ動かしてみる、ということだけに偏ってしまったのです。

口を軽く横に引くことで音が出やすくなった、もっと力を入れて横に引くことで強い息に耐えられるのではないか?
くちびるを閉じる力を強くして見よう!

これらの動きは、下唇が楽器から離れてしまう行動でした。
吹きにくくなります。当然です。

音の出やすい状態を作り、その状態を保つことを優先した上で、色々と工夫することが大事なのだと気が付いたのは、ずーっとずーっとあとです。

それは、20代の頃に師匠である福田輝久先生のひとつの言葉で大きく変化しました。

「下唇が動かないように気をつけてみたら?尺八は蓋の開け閉め(※)が重要だから、しっかりと蓋をした状態をまず基本としないと。」
(※蓋の開け閉めに関してはまた今度話しますねー。)

何気ない一言でしたが、大きなポイントでした。
そして、自分では動いていないつもりでした。もしくは、吹くためなら仕方ないとでも思っていたかもしれませんし、考えたこともなかったかもしれません。

でもすごく動いていたのです。

しかも、下唇が動かないと音が出ないような気持ち、考えにまでなっていたので、その事実に気が付いたとき、そしてまた、下唇が動かなくても音が出ると気が付いたときには感動いたしました。

しかし、これを直すのが苦労しました。
だって、それまで、下唇は動きまくっていましたから。
(動きまくると言っても、普通の見た目には分かりませんが、今の自分から見たら、動きまくっているというレベルです。)

下唇が動かないように意識しながら、音が出やすい状態を保ちながら、吹く。

それ以降は、大きな音も小さな音も、楽に出るようになりました。
だって、簡単に音が出る状態を保つことが優先された上で、大きな音や小さな音、様々な音色をコントロールしようと、色々な部分が動いているからです。

それまでの経験は決して無駄ではないと思います。
周辺の筋力が鍛えられたという意味では。
ただ、意識して動かせない、無意識で動いてしまう筋肉の動きをコントロールできなければ意味がありません。

 

尺八を吹くための土台

僕の失敗からも、今尺八を始めようとしている方や、初心者の方、思い通りに音が出なくて苦労している方の何かの役に立てばと思います。

効率の悪いところで、効率悪く吹いている状態で試行錯誤しても意味が全くありません。
音が出やすい状態をキープしていなければ、大きな音も小さな音も色々な音色を出すこともどれだけ練習してもその場限りのものとなってしまいます。

音が出しやすい状態、という一つの土台を保つことを基礎とする。

決して、息の強さガー、呼吸法ガー、腹式呼吸ガー、アンブッシャーガー、腹圧ガー、声帯ガー、音程ガー、魂ガー、精神ガー、祈りガーと同居させない様にしてください。

音が出しやすい状態、音が出やすい状態が最優先です。
これが作れていなければ、始まりません。
そして、これを壊さないようにすることです。

尺八はけっして音の出にくい楽器ではありません。

楽器として粗悪な尺八が多かったことや、音は出にくいものという先入観、吹き方が悪いからだという先入観などもあり、音の出やすい状態への分析やアプローチが少なかったせいで、うまく説明すること、共有すること、議論することが少なくなってしまい、「音が出やすい状態を作る」という前提が見過ごされてしまっていたと僕は思っています。

長くなりました。
次回、また絵を使いながら、ポイントを説明します。

 

ではごきげんよう。

 

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