「原付かぁ……。」
転んだときにできた擦り傷に薬を塗りながらつぶやいた。
じゃあ、僕も原付の免許とるか?
よく考えるとたしかにそうだ。
いま、自転車に乗れるようになった。
だから、夢中になって、走り出してもいいかもしれない。
でも、彼女は原付でさっさと先にいってしまう。
追いかけるために自転車のトレーニングをする?
ロードレーサーみたいなガチ目なスタイルで、原付よりも最高速はでる!とかいって走っちゃう?
いや、それは、それが楽しい人に任せておけばいい。
じゃあ、原付の免許とるか。
石探しの時間は少し減ってしまうけど、道路交通法を勉強して、原付の免許とっちゃおうかな。
そうすれば、石探しの時間は増えるし、もっと遠くの河原にも行ける。
原付なら彼女とも一緒だ。
近所の河原に歩いて石を探しに行っていたとき。
そのときに考えていたことは、今とは全く違うことだ。
走ることに夢中になったとき。
それも、今とは違う。
自転車に乗ってから、それも全然違うことを考えている。
手段が、方法が違うから、アドバイスは全然違う。
歩いているときなんてなんにも考えてなかった。
走っているときは、しんどいのを我慢するとかそんな感じだった。
自転車のときは、走り出したらバランスをとることを考えれば、とっても楽に進むことが出来た。
見えている景色がちがうから、気づくこと、気がつかないことがある。
ヒントもアドバイスも何もかも違う。
というか、ガラッと変る。
とりとめのない考えが頭の中をぐるぐる回った。
自転車ガチにすすむ?
原付の免許をとる?
それとも……。
翌日、僕は自動車学校に通い始めた。
車の免許を取ることにした。
原付はすっ飛ばしてその先に行こうと思った。
選択肢は他にもあった。
近所の河原で満足することだって、はしることだって、選択肢になる。
そんな中で、僕は車の免許を取ることにした。
原付でも良かったんだ。
でも、車だったら、もっと出来ることが増える事に気がついた。
もっと遠くに行ける。
雨の日でも、天気に左右されない。
そして、他の人も車に乗せて、河原に出かけることが出来る。
石拾いのおもしろさを味わってもらうことが出来るかもしれない。
石拾いになんか誰も興味ないかもしれない、って決めつけていた。
もしかしたら、つれていけば、興味を持ってくれる人もいるかもしれない。
きれいな石、っていったって、その基準は人それぞれ。
自分がきれいだと思う石を拾えばいい。
誰か決めたから、誰かが違う、正しい、といったから、石の価値が決まる訳じゃない。
石を拾うのが楽しい。
きれいな石を探すのが楽しい。
そこなんだよね。
石探しは歩いて行かなきゃ、
自転車で行かなきゃ、
誰かに連れてきてもらうなんてもってのほか、
ごちゃごちゃと能書きをいったってしょうがないもの。
そんなの、誰も決められない
なにより、免許証は身分証明にもなるし。
と、いろいろなカッコつけるような、もっともらしい建前を並べているけども、本当の目的はもう一つある。
もちろん、自分で河原に向かう、という楽しみを奪ってしまうかもしれないけど、一緒に向かっているという楽しさだってあるはずだ。
いや、あるようにすればいいんだ!と謎の決意を胸に自動車の免許を取ることに決めた。
彼女を助手席に乗せて一緒に河原に行こう。
一緒に石を拾いに行って、一緒に石をみつけたい。
終わり。
※今日のごはん写真
とりあえず、今回はこの辺で終わりにします。
なんとなく、物語が終わったような形になりますが、実はこの物語の続きの出だしがすでに書いてあります。
でも、ここまでにして、続きはまたいつか、ということにします。
お話も書きたいのですが、普通に尺八の話題も書きたいので。
お付き合いいただきありがとうございましたー。
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