連続ブログ小説 きれいな石 第3話「自分を縛るもの、解放するもの」

他にあるいくつもの河原に行きたい。

そのうえ、遠くにもいってみたいんだよね。

 

きれいな石、拾いたいから。

 

そんな風に思ったのは、あの河原での出来事があったからだ。

 

 

だけど、走ると疲れるんだよね。

それを走って行くことと想像したらめちゃくちゃしんどいわ。

 

きれいな石を探すのならば「走らなければいけない」これがずっと続くんか、と思っていた。

 

自転車に乗れたら、楽に行ける。

しかも走るのより楽に。

 

 

そんなんことは知ってた。

でも、自転車のれないから。

 

走って河原に行って、きれいな石を拾いに行っていた。

しんどいけど。

きれいな石を拾うのにはしんどい思いをしなきゃいけないって。

しんどい思いをすればきれいな石を拾えるって思っていた。

 

 

そう思わないと、救われないから。

 

 

僕は、いつから走ることにこだわってしまったんだろう。

 

自転車にのれないからと最初から諦めていた。
いや、選択肢にもいれていなかったのか?

一瞬考えたけど、走れるからといいやと、そっちを選んだ。

 

今を基準にして、結果的にしんどい方法を選択してた。

その先、その次のことなんか考えていなかった。

 

今、走れるから、それでいけるって思ってしまった。

うすうす感づいてはいた。

でも、認めると違うような気がしていた。

 

どっかで、なにかにきっかけがないかと思っていた。

思っていたところにあの子が現れた。

 

 

「もしよかったら、今度、僕に自転車の乗り方教えてくれませんか?」

 

 

それまで思ったとしても、口に出したくなかった言葉が自然と出てきた。

 

 

そんな僕が今は、自転車にまたがって、足で地面を蹴っている。

ペダルを漕がずに。

 

おなじように自転車にのる練習をする子ども達にまざって。

 

「なんだこれ」

 

僕は自転車にのりたいんだ。

ペダルを漕がせろ。

 

「おにいちゃんも自転車乗る練習してるの???」

「同じだね!」

「がんばろ!」

 

無邪気に声をかけてくる子ども達の言葉に急に恥ずかしくなってくる。

 

僕は、僕は、もう大人なんだから、こんな子どもだましみたいなことをしないでもいいじゃないか。

もうペダル漕がせろ。

 

いっそ漕いでやろうか。

よくぞここまで我慢してたと思う。

 

よし、漕ごう、と思った瞬間に

 

 

「ペダルを漕がないで、先に地面を蹴るだけにして、前を見てバランスの取り方を覚えた方が早いよ!」

 

 

不満そうな表情が顔に出ていたのか、あの子がいった。

 

 

 

どうやら、最初は、ペダルをこがないで、地面を蹴るだけ、とか。

遠くを見ること。とか。

 

まずはそれを身につけろということらしい。

 

わかっていても、ついつい、ペダルをこぎたくなるんだよね。

今できないってわかっていても。

最終的にはペダルをこぐんだからって思っちゃって。

 

バカバカしくおもえてくる。

馬鹿にされているのかともおもえてくる。

 

しかしだ。

 

そうじゃなくて、なるほど、とおもって、ペダルをこがない。ってことの意味を考えたら腑に落ちた。

自転車はべつにずっとペダルをこぎ続けなくてもいいんだよね。

 

回転する車輪の進む力に、まかせること。

 

三輪車みたいに、大昔の自転車みたいに、チェーンがなくて、自分がこぐことが目的になっている乗り物。

あの感覚は多分役に立たない。っておもった。

 

ペダルを早く漕ぎすぎてもダメなんだよね。

ペダルを漕ぐ、ってどういうことか。

ゆっくり漕いでもいい。けど、遅すぎちゃダメで。

 

 

バランスをとって進む適正なスピードになればいい。

 

 

バランスをとって遠くを見る。

 

身につけなくてはいけない動作が2つある。

 

 

ペダルを漕いじゃうから、足下が気になったりして遠くを見ることができない。

自分の体の操作を自分で見ないと、自分の体が操作できているか認識できない。

 

自分の体の操作を確認してしまったら、バランスをとって遠くを見る。ってのが出来なくなっちゃう。

 

 

同時にやろうとすれば、難易度は格段にあがる。

 

無理に出来ないことをやる必要なんかない。

転んで、怪我をして、それでようやく自転車に乗れる。って思ってたよ。

 

転んだりせずに、怪我もせずに、乗れる方法があるんだな。

 

 

僕一人でやっていたら、自転車に乗れるようになるのにまた1か月、2か月かかっていたかもしれない。

転びまくって無駄な怪我と無駄な時間をすごしていたかもしれない。

 

 

一つ一つ、できることをできるようにする。

 

 

その結果、僕はその日に自転車に乗ることができた。

 

 

「いいじゃん!その調子!もう自転車のれたじゃん!」

 

丁寧にわかりやすく教えてくれてた彼女のおかげだ。

 

 

ペダルを漕ぐ足に地面の押し返す力が伝わる。

 

このまま、どこまでも走って行ける気がした。

風を切るのがとてもここちよい。

走っているときとはまた違う、全然違う感覚。

 

これで、しんどい思いをして、走って、河原に行かなくて済む。

 

あの子と、自転車に乗って河原に行ける。

石を探せる。

 

石拾いは孤独。

石拾いはしんどいのが当たり前。

そんな風に思っていた僕の心が鮮やかに色づいた瞬間だった。

 

 

「おつかれー、じゃあ、またねー」

 

 

彼女は大きな声でそう叫んで帰っていった。

 

 

原付で。

 

 

え?

 

 

原付???

 

 

 

そして、僕はその日はじめて自転車で転んだ。

 

 

 

つづく。

 

 

 

 

※今日のごはん写真

いったい、いつまでやるんだという声が出てきそうですね。

この説が始まってから、PVが急激に伸びております。

 

びっくりしています。

 

この説が理由かどうかわかりませんが、もう少し続けてみて分析したいと思います。

尺八の話題を書こうとすると、真剣になりすぎて、真面目になってしまいます。
たのしく、明るい話題をかきたいな、と思うのですが、どうしても、難しい話に。。。

ということで、こんなことになっていますね。

何なんでしょうね。

 

 

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